囲碁トリビア
No.1 : ついてこれるか、知性の格闘技。
入場時に、ド派手なテーマ音楽は流れない。
相手を威嚇するような大声は、飛ばし合わない。
基本的に、半裸では対戦しない・・・
一見、静かに黙々と石を打ち合うイメージの強い囲碁ですが、その本質は、己の知性のみで激しくバトルする、いわば「盤上の格闘技」。背後には、火花の飛び散るような、スタイルとスタイルのぶつかり合いが隠されています。
たとえば、故・加藤正夫氏の場合。
普段は温厚な性格が、対局となると一変。
激しく攻め立て、普通ならば到底死なないような石を奪ってしまう剛毅なスタイルから、取った異名が「殺し屋加藤」。
また、武宮正樹九段の場合。
中央から相手を圧倒、碁盤の中央に大模様を作る独特の棋風が有名で、感性の爆発したそのスタイルは、誰が名づけたか「宇宙流」。
一度、ワークショップの余興で梅沢由香里五段と、祷陽子五段の女流棋士お二人にこんな実験をお願いしました。
「打ちながら、自分たちの心理状態を口に出してみてください」
・・・結果。清楚な二人の口から飛び出す激しい言葉の応酬!
挑発!
揺さぶり!!
潰し合い!!!
ギャラリー一同、ベールに包まれた激しい心理戦の一端を垣間見て、ゾクゾクとしびれてしまいました。
囲碁における、そんな格闘技的な世界を文学で表現したのが、川端康成の「名人」(新潮文庫)。
無敗の名人と呼ばれた本因坊秀哉と若き挑戦者との半年にも及ぶ激闘を描いた作品ですが、文字通り命を削って勝負に臨む名人の姿には鬼気迫るものがあり、読んでいるこちらの体力を激しく消耗します。若いひとたちにこそ、ぜひ読んで頂きたい一冊。
肉体のぶつかり合いを観賞する格闘技も楽しいものですが、囲碁の魅力は、誰もが気軽にトライできること。
盤上には、年齢も性別も腕力も一切関係ありません。必要なのは、あなたの感性。そして知性。
さあ、ぜひ。碁盤というリングにデビューしませんか。
